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NEWS 2008年4月16日

喫煙が関係すると見られる、肺がん原因遺伝子を発見

2007年7月、自治医科大学の間野 博行教授らと科学技術振興機構の研究グループは、肺がんを引き起こす新たな原因遺伝子を、喫煙者の肺がん細胞から発見した。喫煙と関係しない肺がん原因遺伝子は発見されていたが、喫煙と関係すると見られる遺伝子の発見は初めて。

肺がんは日米を含む先進国のがん死因第一位であり、早期発見法や延命法が見つかっていない難病である。最近、一部の肺がん症例で、EGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子の変異が発見され、これに対しては、EGFRのキナーゼ活性阻害剤であるゲフィチニブ(gefitinib,商品名イレッサ)が有効であることが確認された。だが、EGFR遺伝子変異は非喫煙者の肺がんに多く見られるものであり、肺がんの多くを占める「喫煙による肺がん」の原因遺伝子はこれまで不明だった。

同グループは、喫煙歴のある62歳の男性肺がん患者のがん細胞からmRNA(メッセンジャーRNA:注)を抽出し、がん化を引き起こす遺伝子を探したところ、2番染色体にある、細胞の骨格たんぱく質を作る遺伝子「EML4」と、細胞内のたんぱく質をリン酸化によって修飾する酵素の一種(チロシンキナーゼ)を作る遺伝子「ALK」という二つの遺伝子が半分ずつ融合した、異常な遺伝子「EML4-ALK」を発見した。ALK遺伝子はEML4遺伝子と融合することで、産生される酵素が通常のチロシンキナーゼではなく、強いがん化能を有する活性型チロシンキナーゼになっていることを確認した。

EML4遺伝子とALK遺伝子はどちらも2番染色体短腕の近いところに、互いに反対向きに存在する。このため、EML4-ALK遺伝子が作られるには、2番染色体が途中で切れて、逆向きにつながる(逆位)必要がある。この患者のDNAを調べたところ、2番染色体短腕に小さな逆位が存在することが確認された。

更に他の肺がん患者を調べたところ、75名中5名(6.7%)の染色体に、このEML4-ALK遺伝子が確認され、うち4名が喫煙者だった。この結果から、EML4-ALK遺伝子は喫煙と何らかの関係があると見られる。

同グループは肺がんの約1割の症例において、EML4-ALK遺伝子により産生された活性型チロシンキナーゼが存在することも確認した。

また、PCR(Polymerase Chain Reaction:特定のDNA断片を大量に増やす手法)によるEML4-ALK遺伝子の検出診断法も開発した。この診断法はEML4-ALK遺伝子を持つ細胞が、喀痰1ml中にわずか10個でもあれば検出が可能である。従来、がんの診断法は、採取した試料中にがん細胞が一定量以上存在しないと診断が難しいため、早期の発見が困難だったが、この診断法は極めて感度が高いため、肺がんの早期発見が可能になると期待される。

加えて、ALKのキナーゼ活性阻害剤が、EML4-ALK遺伝子変異による肺がんの治療薬になることも期待される。

(注)メッセンジャーRNA
伝令RNA。 DNAの遺伝子情報(塩基配列)を写し取った一本鎖RNAであり、その情報を元にリボソームでタンパク質が生成される。

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