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2008年4月15日
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が慢性胃炎、胃潰瘍や胃癌などを発生させる原因となることは、近年よく知られるようになったが、胃癌発生に強く関与していることを世界で初めて確認したのが、呉共済病院の消化器科医長だった上村 直実である。
ヘリコバクター・ピロリは1983年、オーストラリアのロビン・ウォレンとバリー・マーシャルにより発見された。マーシャルは更に、ヘリコバクター・ピロリが慢性胃炎や胃潰瘍の原因菌であることを証明する為、培養したヘリコバクター・ピロリを自ら飲み、急性胃炎を発症して、そのことを証明した。この発見の功績により、ウォレンとマーシャルは2005年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
胃癌との関係性については、1994年にWHO(世界保健機構)の一機関であるIARC(国際がん研究機関)が主に疫学調査により、ピロリ菌をグループ1発癌物質(確定発癌物質)と認定。また、1998年に日本でスナネズミにピロリ菌を感染させると、1年半ほどで胃癌が発生する実験結果が報告され、ピロリ菌と胃癌発症の関連性が更に強まっていた。
上村らは1990年から1993年までの間に、胃潰瘍等の疾患で内視鏡検査を受けた患者1,526人について、ピロリ菌に感染しているかどうかを調査し、非感染者が280人、感染者が1,246人という結果を得た。次にその患者について、平均7~8年間に亘って追跡調査を行い、ピロリ菌感染者1,246人のうち36人(2.9%)に胃癌の発生が認められたのに対し、ピロリ菌非感染者280人には一人も胃癌の発生が無かったことを確認。その結果を2001年、米医学誌「The New England Journal of Medicine」に論文発表し、世界的に高い評価を得た。
特筆すべきことは、調査対象だったピロリ菌感染者のうち、途中で除菌を行った253人の患者には、その後4~8年間、胃癌の発生が認められなかったことである。この結果はピロリ菌の除菌により、胃癌の発生を防止出来ることを示しており、現在臨床試験が進められている。
上村の発表の後、研究は更に進み、全ての胃癌がピロリ菌で発症する訳ではないが、ピロリ菌非感染者に胃癌はほとんど確認されず、現在では胃癌の99%近くがピロリ菌と関係があると言われている。