6種類のクオークを予言 小林誠 益川敏英 | 日本の世界一

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2009年12月27日

6種類のクオークを予言 小林誠 益川敏英

1964年、クローニン、フィッチらによって、中性K中間子の崩壊過程で「CP対称性の破れ」(*1)現象が見つかった。当時の弱い相互作用における素粒子理論では、「CP対称性の破れ」は起こらないということが知られていたので、この現象は大問題となった。
1973年、京都大学助手であった益川、小林はこの問題に対する解答を用意した。それは、電磁相互作用及び弱い相互作用統一理論(電弱統一理論)に基づく6クオークモデル(*2)の提唱である。(小林・益川理論)
この成果が認められ、2008年、小林・益川両氏は、ノーベル物理学賞を受賞した。

小林・益川は、1967年に発表された電磁統一理論にクオークモデルを適用することを研究し、その結果6種類以上のクオークが存在すれば「CP対称性の破れ」が生じることを理論的に示した。当時、クオークは3種類という認識であったにも拘わらず、一挙に6種類のクオークを予言したことは驚くべきことである。また、大問題となっていた「CP対称性の破れ」のメカニズムも明らかにした。

ところが、世界中の大半の研究者はクオークの存在に懐疑的であった。しかし、1974年、その認識を打ち破る事件が起こったのである。ジェイ/プサイ粒子の発見により、アップ、ダウン、ストレンジに続き第4番目の「チャームクオーク」の存在が示された。これにより、クオークの存在に対する疑念は一掃され、その後、加速器などによる実験・研究が盛んに行なわれるようになった。

1977年には、ウプシロン粒子の発見により、「ボトムクオーク」の存在が示され、最後6番目の「トップクオーク」は、1994年、米国立フェルミ加速器研究所で日米伊約400名の研究者からなる共同実験グループが、その存在の証拠を得たと発表、翌年1995年に正式に確認した。

一方、小林・益川理論で示された「CP対称性の破れ」のメカニズムについての検証は、つくば市の文部科学省高エネルギー加速器研究機構(KEK) で、B中間子の崩壊を観測することで「CP対称性の破れ」を実験・研究を行なっている。2001年には、KEKのBelle共同実験グループと米SLAC のBaBarグループが、間接的な証拠を確認し、さらに、2004年には実験精度を高め、99.99%の確率で小林・益川理論の正しさを立証した。KEK では、小林・益川理論の検証のさらなる精度を高めるための実験や新たな物理現象の発見に向けた実験・研究が続けられている。

米スタンフォード線形加速器センター(SLAC)の論文集計データベースによると、データベース化が始まった1960年代終わりからの高エネルギー物理学分野の歴代論文引用回数で、30年以上前に発表された小林・益川の論文が、2006年時点で単独の論文としては歴代2位、全論文でも歴代3位を誇っている。

(*1)CP対称性の破れ

Cは荷電共役といわれ、粒子と反粒子を入れ替えること、Pは空間反転といわれ、鏡像にすること。
CP対称性とは、CとPの操作を連続して行なっても物理法則は不変であること。
従って、「CP対称性の破れ」とは、荷電共役と空間反転の連続操作により物理法則が変化すること。

(*2)クオークモデル

1964年、ゲルマン、ツバイクがアップ、ダウン、ストレンジの3クオークモデルを提唱。
電弱統一理論の登場で、4番目のチャームクオークの導入を提案。
1973年には、小林・益川がを6クオークモデルを提唱。
現在の素粒子標準理論では、三世代6クオークモデルを採用。
質量は異なるが性質の同じものを一組として世代と呼び、
第1世代はアップとダウン。第2世代はチャームとストレンジ。第3世代はトップとボトム。

[小林誠(こばやし まこと)プロフィール]

1944年 愛知県名古屋市に生まれる
1972年 名古屋大学大学院理学研究科修了
京都大学理学部助手
1973年 益川とともに6クオークモデルを提唱
1979年 高エネルギー物理学研究所助教授
仁科記念賞 受賞
1985年 高エネルギー物理学研究所教授
日本学士院賞 受賞
J.J.サクライ賞(アメリカ物理学会) 受賞
2001年 文化功労者 受賞
2003年 高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所長
2006年 高エネルギー加速器研究機構名誉教授 現在に到る
2007年 欧州物理学会高エネルギー・素粒子物理学賞 受賞
2008年 ノーベル物理学賞・文化勲章受章

[益川 敏英(ますかわ としひで)プロフィール]

1940年 愛知県に生まれる
1967年 名古屋大学大学院理学研究科修了
名古屋大学理学部助手
1970年 京都大学理学部助手
1973年 小林とともに6クオークモデルを提唱
1976年 東京大学原子核研究所助教授
1979年 仁科記念賞 受賞
1980年 京都大学基礎物理学研究所教授
1985年 日本学士院賞 受賞
J.J.サクライ賞(アメリカ物理学会) 受賞
1997年 京都大学基礎物理学研究所所長
2001年 文化功労者 受賞
2003年 京都大学名誉教授 京都産業大学教授 現在に至る
2007年 欧州物理学会高エネルギー・素粒子物理学賞 受賞
2008年 ノーベル物理学賞・文化勲章受章
2009年 京都名誉市民

参考文献