自動で動く機械のしくみの教科書 細川頼直『機巧図彙』 | 日本の世界一

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2010年1月6日

自動で動く機械のしくみの教科書 細川頼直『機巧図彙』

『機巧図彙』は、1796年、土佐藩(高知県)の科学技術者である細川 頼直によって書かれた。この本は、からくりの仕組みやその製作方法を詳細な図とともに紹介しているからくりの教科書であり、江戸時代の自動機械について詳述した唯一の文献。現在のロボットや自動機械の解説書の元祖といえる。

「からくり」とは、人形や道具などを動かすための仕掛けのことであり、一般には「からくり人形」として知られている。からくり人形の中でも特に有名なのは、「茶運人形」と呼ばれるもので、人形が持っている台の上に茶碗を乗せると、人形が動いて茶を客に運び、客が飲み終わって台の上に茶碗を戻すと、方向転換して帰っていくという動きをするものである。この「茶運人形」が現代でも製作可能であるのは、その製作方法が詳細に記された本が残っているからに他ならない。その本が細川 頼直の『機巧図彙』(きこうずい、あるいは、からくりずい)である。

細川 頼直、通称半蔵は土佐藩に生まれたが、志を持って江戸に出て天文学などを修めた。江戸幕府が暦を改めた際には、その任に命ぜられるほどの科学技術者であった。正確な生没年はわかっていないが、1730年~1796年と言われている。

『機巧図彙』は、首巻・上巻・下巻の三巻からなり、江戸で出版され、再版も重ねられた。からくりの仕組みや製作方法が図入りで示され、首巻では和時計が四種類、上巻ではからくりが三種類、下巻ではからくりが六種類紹介されている。その解説は詳細で精確なもので、これを参考にして実際に人形の復元が可能であり、多くの愛好家たちがこの本を基にした解説書に従って自作のからくり人形を製作している。

また同書は、現代の機械工学を学ぶ人たちにとってもその歴史を学ぶ上で大切な教材になっている。からくりの技術は時計の歯車の仕組みを用いており、その水準は現代からみれば極めて低いもので、人形やそのからくりに用いられる材料も木材や水銀など限られたものであったにすぎない。しかし、人形に前進や方向転換を行わせるその巧みな仕組みには、現代の自動制御の発想に刺激を与えるものをみることができると言う。

そのような技術は当時としては最高水準のものであり、秘伝として門外不出であった可能性が高い。その出版が行なわれたということは、当時の人々にとってはもちろんのこと現代の人々にとっても大きな功績となっている。本書の発行後に細川 頼直は死去したと伝えられているが、その死因は不明である。

その他にも、からくり人形作りの第一人者である田中 久重(1799~1881)、通称からくり儀右衛門の代表作として「弓射り童子」が残されている。童子が弓を引き、的をめがけて矢を射るものである。その巧みな動きも人々の目を楽しませるものである。田中 久重は高い技術力を活かして製作所を設立したが、これは現在の東芝となっている。

参考